思いっきり就任祝宴会で彼女たちを蹴散らしたためだろうか

黒崎病院は一時の平穏を迎えていた

春に行われる全体会議も終わり、海斗も少し余裕が出てきたようだ

救命に顔を出すこともほんの少しだけ、増えた

……のに


「どうしてもダメですか?」

「ダメよ。何度言われようと、ダメなものは、ダメ」

黒崎病院B棟の一角

しるふは顔なじみの女医とにらめっこしていた

「でも、全然体調悪くないし、事務くらいだったら…」

「ダーメ。あなたに何かあってごらんなさい、黒崎副医院長ににらまれるだけならまだしも、黒崎病院に私たちの居場所がなくなるじゃない」

だから、ダーメ

一歩も譲ろうとしない坂井美琴ことにえー、と壁にもたれかかりながら抗議する

「海斗の許可貰っても?」

「いいわよ。黒崎副医院長が、許可を出す、ならね」

状況を説明しよう

今、しるふがいるのは黒崎病院B棟にある産婦人科診察室

診察するのは、坂井美琴こと産婦人科を代表する女医

しるふと海斗の顔なじみで、副医院長夫人であるしるふの担当をしている