あの時とこれからの日常

それに

そう言葉を続ける海斗の声音が氷のように冷たさを帯びる

「何かの利益が欲しくてしるふを選んだ訳じゃないんだ。お前たちの勝手な判断基準を押し付けてくるのは、大概にしろ」

利益なんていらない

ただ、傍にいてほしいと居たいと願っただけ

ただ、それだけだ

「少し調べればいいネタになるようなあらなんてたくさん出てくるさ。それこそお前たちが飛んで喜ぶようなネタだってあるだろう。それでも何を言われようと俺はしるふを手放すつもりはないし、他の女を選ぶつもりもない」

ここまで言っても諦めないなら逆に尊敬に値するかもな

周囲のしるふに好奇の目を向けてくる全員に向けた放たれた容赦のない言葉

ここまで言ってそれでもしるふを蹴落とそうとするほど度胸のある奴はそうそう居ないと海斗は知っている

家柄に後押しされた輩なんて所詮薄っぺらだ

そんな奴らがしるふに並ぼうとすることさえ厚かましい

「いつか後悔するぞ。なんの取り得もない女を選んだことを」

吐き捨てるように並べられた山辺教授の言葉にぴしゃりと海斗の言葉が重なる

「これ以上俺の地雷を踏んでお前たちに利益があるか」

漆黒の瞳が鋭い光を帯びる

苦虫をつぶしたように悔しそうに顔をゆがめて山辺教授は背を向ける