あの時とこれからの日常

想像って言うのは、やっぱり想像でしかないわけで

今まで知っていた世界なんて狭きものだと思わされる

会場に入った途端、その明るさと煌びやかさに、せっかく貼り付けてきたおしとやかな雰囲気がはがれるところだった

改めて海斗への期待度や有望性をかみしめた瞬間だった

向けられるのは明らかに興味から来る視線

見定められている、そう表現するのが適切だろうか

これじゃいちいち肩の力を抜けやしないなー、と出逢ったころの一匹狼っ気の強かった、会合なんかに参加すると決まって不機嫌に疲れて帰ってくる海斗を思い出した

「大丈夫か」

思わずはあ、と息を漏らしたしるふに、海斗が少しだけ腰に回した手に力を込めながら小さく聞いてくる

余りの人の多さとそれぞれの放つ雰囲気の違いに感嘆にも似たため息だったのだけれど、思いがけず心配させたかな

と、海斗を見上げながら「うん」と微笑む

立食式の会場で、それぞれが話に花を咲かせているけれど、どうも遠巻きに見られているようだ

唯一味方というかが医院長と沙希さん家族

あと医院長にくっついてきた矢吹さんとその隣に控える聖さん

そのほかは知らない人だし、向けられる視線も決して好意的とは言えない

誰が一歩目を踏み出すか、気配を読み、全員がなりを潜めてしまっているようで居心地が悪い