また季節が廻った

でも今年は今までとは少々変わって

新たな一歩を踏み出した

私も、海斗も…


「いらん」

吐き捨てるようにぴしゃりと言い放ち、同時に手に持っていた資料をばさっと机に放り投げる

黒崎病院医院長室

茶色を基調とした部屋は、落ち着いていて変に厳かさもなく、信次の穏やかな気性を象徴しているようだ

ここにこうやって二人で顔を合わせることは珍しい

「そう言うなって」

中央に置かれたソファの向かい側で、まるでその反応を予期していたように苦笑した信次がなだめてくる

「んなことしてる暇ないんだよ。こっちはやることが比喩じゃなく積みあがってるって言うのに」

どうして時間を割いてまで就任祝宴会なんぞやらないといけない

その必要性が全く見いだせない海斗は不機嫌そうに眉を寄せる

「まあ、せっかく周囲が開いてくれるって言うんだ。顔出す位いいだろ」

「それが黒崎病院の面々が企画したって言うなら顔を出してやらんでもない」

が、

「どうせ繋がりのある製薬会社とかだろう?」

その裏にある思惑が見え見えなんだよ

4月1日、黒崎病院副医院長に就任を発表した海斗は、それからというものさまざまな雑務(と言っていいのかはわからないが…)に追われる日々を過ごしていた