「ねえ、海斗」

月明かりすら射さない暗闇の中

ささやくようなしるふの声だけが響く

隣で海斗が、顔だけを向けてくるのが気配でわかる

「私、決めた」

「何を」

促す海斗の口調は、暗闇のせいだろうか、いつもより優しいような気がする

「今日ずっと考えてた。私に何ができるかなって。どうすれば海斗の望みをかなえつつ、でも隣に居られるかなって」

海斗に応えたい

想いはそれだけだ

「私は、ずっと海斗のそばにいる。ずっと、海斗のそばで笑ってる。たとえ何があっても、それこそ世界中が海斗を批判しようと、私だけは海斗を信じる」

それがきっと私が海斗にできること

あれだけの想いを向けてくれる海斗に

譲れない、そう言い切った海斗に

もうずっと、ずっと前から決心していてくれた海斗に

しるふが返せるのは、それしかない