あの時とこれからの日常

ふと視線だけを向けてくる海斗の漆黒の瞳が、

今ではもうときめきではなく安らぎをもたらすものになった

「私別に接待とかしてもいいよ?副院長夫人だもんさ、そういうの仕事の一環でしょ?」

しるふを見つめる海斗の漆黒の瞳が、ふとわずかに細められる

「今まで散々海斗の陰に隠れて守ってもらったもん。これからはもう少し公の場に出てもいいかなって」

だからさ、新年度になったら副院長の仕事手伝ってもいいよ

交わった視線を外したのは、海斗の方だ

病院から眺められる海に視線を戻す

「ばかか。何が俺の決心と覚悟を理解して、だ」

全然理解してないじゃないか

「してるよ。してる上で言ってるの。海斗は自分でいろいろ決めちゃうもん。私の意見、少しは聞いてもいいと思うよ」

私だってさ、これを機に少し変わろうかなって思ってるし

もう少し、本当の意味で海斗の立つ場所に立ってみたい

そしたらもっともっと海斗のことがわかるだろうから

海斗がさらされている状況は、その重圧やつらさは

そこに立ったことのないしるふにとって

ただの想像でしかない