あの時とこれからの日常

見上げると広がるのは水色の空

ところどころに白い雲が浮かんでいるのも何と幻想的だろうか

春の風は心地よく、こういう気候ならもってこいの休憩場所なのに

としるふは屋上の手すりに寄りかかる

頬を撫でていく風が穏やかさを増したのは、きっと気温のせいだけではない

ギィ、と低い音を立てて背後でドアが開く

ふと視線だけ向けると予想通り、彼の姿があるから

思わず微笑んでしまう

「おつかれ」

軽い足取りで隣に並ぶ海斗を見上げながら短く声をかける

「おつかれ」

海斗も返して、手すりに肘をついて頬杖を突く

相変わらず身長だけは高いらしい

こっちは手すりに腕を乗せて、その上に顎を乗せるのがベストポジションだというのに

さらさらと風がそよいでいく

ふわりとはためく白衣が、二人分風に踊る

「ねえ、海斗」

沈黙の中、口を開いたのはしるふだ