あの時とこれからの日常

「あれ、そこも聞いてた?」

地獄耳ですね、黒崎先生

「んなわけあるか。どうせしるふのことだ、自覚なんてミジンコほどもないんだろう」

「ミジンコはひどいなー。しかもさっき莉彩のおかげで丁度自覚が芽生えたもんね」

「お前、まじ喧嘩売ってるだろ」

嘘でもいいから自覚位あるって言っとけよ

「私は海斗と違ってそう軽々しく嘘はつかないんですー」

お生憎様ー

「嘘も方便って言うだろ。生きていくうえでそれくらい身に付けとけよ、いい年なんだから」

「ああー、またそうやって年の話するー。嫌味?嫌味だよね、海斗」

「あのー!!」

取りつく島のないほどに言い合う二人の間で業を煮やした莉彩がうんざりと口を開く

第三者の声に、ふと海斗としるふが莉彩に視線を向ける

「仲がいいことはとってもよろしいんですが、そろそろ朝の往診行ったらいかがです?」

日が暮れますよ

莉彩の低い声とあきれ交じりに細められた瞳に

「確かに。これの無自覚は今に始まったことじゃないしな」

と頷いてさっさとICUに姿を消すのは、海斗の方だ