「そういえば、今日黒崎先生と立花先生がさっさと帰ったわね」

あの二人にしては珍しく

定時丁度に椅子から立ち上がった

「なんだ、海斗の結婚報告もしようと思ったのに」

苦笑交じりに空いている花瓶に水を注ぐ

すでに生けてある花には、花びらの中央が淡いピンクの百合が混じっている

真っ白の百合なんてつまんないでしょ?

そう言って笑った彼女が、白いユリではなく、

このピンクの混じった百合を好んでいたことを知っているのは、

信次と沙希と、そして海斗だ

墓石の前に置いてある銀色の花瓶が、場所を譲るように二つ空いている

そこまで気を使わなくてもいいのに

そっと花を生けながら一人苦笑する

あの二人が、これからもずっと共に歩んでいくことを願いながら

ふと見上げた空は、温かな夕焼けだった