「失礼だな。前に言ってたろ、一本でいいから特別な時にバラをもらってみたいって」

せっかく実行してやったのに

「それ何時の話?」

海斗の言葉に驚いて顔を上げる

「さあ、いつだったけな。街をふらふらしてた時に偶然花屋の前を通りかかったときなのは覚えてるけど」

通り過ぎようとした花屋の前で、海斗の腕を引っ張ったのはしるふだ

青空の下、気持ちのいい気候の中でしるふが珍しく(失礼か…)

乙女っぽい瞳でそう話していた

「……、海斗」

いったん休憩するのだろうか

海斗がしるふの呼びかけに視線を向けながら隣に座る

「私、今猛烈に感動してる。この一年の留学なんて水に流してあげるね」

「それはどうも」

これはありがたがるべきか

それとも実は留学なんてしてほしくなかったんだよ、

するなら連れて行ってほしかったんだ、というしるふの心の声を重視するべきだろうか

そんなことを考えながら海斗はしるふの言葉に応じる