「黒崎先生」

カンファレンスと終らせ、従業員たちを解散させた医局長が、研修医を伴って海斗に近づいてきた

興味津々で群がる看護師たちから離れて自分の机に寄りかかっていた海斗は、

なんですか、

そう視線で問う

「あなたに指導医を頼もうと思って」

「俺ですか」

その意図が見えずに神宮寺医局長の瞳を怪訝そうに見る

「ええ」

にっこりと微笑まれ、さらに不信感がふくれる

いったいこの医局長は何を考えているんだ

今までの研修医との過去を思えば、お気に入りの研修医をわざわざ自分に預ける理由がわからない

しかも、女の

それだけでげんなりするのは、日々、社長令嬢やら医学部教授の愛娘やらに熱烈なアプローチをされているせいだ

最近、自分は女嫌いなのではないかと真剣に考え始めた海斗である

ま、二、三日ふるいにかけたら落ちるか

それまでの辛抱、と結論付けた海斗は

「わかりました。保証はしませんけど」

と、神宮寺に静かな視線を投げかける