「それに、こうしてしるふが代わりに怒ってくれるしな」

自分のために誰かが怒ってくれているというのは、それだけで優しい気持ちになれるものだ

「私が怒んなかったら海斗怒るの?」

「いや、怒るだけ無駄なんだよ、俺の中で」

「ちょっとー、なだめるつもりがあるんだかないんだか、はっきりしてよね」

むー、と細められた瞳が海斗をにらむ

「なだめるつもりはあるさ。医局長直々頼まれたし、姫の機嫌はそのまま医局の雰囲気に直結してるしな」

いつも微笑んでいるしるふの機嫌が悪いというのはかなりな影響なのだ

「だったらがつんと一発言い負かすくらいの気概を見せなさいよね」

その一言に海斗が笑いながら

「しるふが悪く言われるんだったらそれくらいの気概を見せるんだけどな」

そういって立ち上がる

自然な動きでしるふの手から空になったパックを取ると自分の分と一緒に捨てて、

ベンチまで戻ると驚いたように見つめてくるしるふに手を伸ばす

海斗を見てから伸ばされた手を見て、再び海斗に視線を移したしるふに小さく微笑む

観念したように口元をゆるませながら海斗の手を取ってしるふが立ち上がる