「黒崎先生」

今は穏やかな時が流れる処置室で、飯田莉彩と共にドクターヘリ用の機材を確認していた海斗は、

処置室のドアが開くとともに呼ばれてふと振り返る

「医局長」

どうしたんですか

少し疲れたような雰囲気を出す神宮寺は珍しい

「あなたのお姫様のご機嫌がすぐれなくてね。手が付けられないのよ」

どうにかなだめてもらえる?

「立花が?」

不思議そうに目を見張る海斗の横から飯田が口をはさむ

「珍しいですね、立花先生が医局長すらも手におえないほど機嫌が悪いなんて。黒崎先生また何かしたんじゃないですか、立花先生の乙女心を傷つけるようなこと」

「飯田も大概失礼だよな。第一あいつに乙女心なんて存在しない」

そんな可愛い性格してないよ

「じゃあ、ガラスの心?」

有り得ない、そんな瞳で飯田を見下ろす

「横山会長よ」

ふー、と息をつきながら発言したのは神宮寺だ

「もしかしてさっき黒崎先生にぶつぶつ文句たれてたのが横山会長ですか」

「そうよ。某大学病院のお偉いさん。腹黒さと欲深さにすべての栄養を注ぎ込んだ禿げ頭。さっき横山会長に失礼極まりないことを言われたんですって?それで立花先生が怒ってたわよ」

すっと海斗に視線を送る