医局のドアは中央だけ磨りガラスになっている

解放感と少しのプライバシー保護の結果だ

そのドアがいま、けたたましい音と共に閉められる

ずかずかと眉を吊り上げ医局に入ってきたのは、黒崎病院のマドンナこと立花しるふ

「医局長!!!」

まっすぐに奥にある神宮寺の席に向かうしるふを他の医局員、しいては園田までが遠巻きに眺めている

触らぬ神に何とやら、だ

「どうしたの、立花先生」

余りの剣幕にさすがの神宮寺も少し身を引き気味だ

「なんなんですか!!あのくそじじいは!!」

「くそじじい?」

言葉づかい…なんていう野暮なたしなめは今はしないでおこう

「あんの剥げ面、黒崎先生のことなんて言ったと思います!?」

バン、と勢いよく机をたたきながら神宮寺に迫る

「ああ、横山会長ね」

しるふの指すくそじじいが、先ほど黒崎病院をなぜか我が物顔で歩いていた他病院の会長だとわかった神宮寺は、その腹黒さを思い出す

黒崎病院に何らかかわりがない癖に機材の置き方や受付にいろいろいちゃもんをつけていた彼は、最後にあろうことか黒崎先生こと海斗にまで心無い言葉をかけたのだ