「今日は一人?」

いつも海斗と連れだってやってくるしるふが、独りであることは珍しい

待ち合わせ?と聞くと

「ううん。今日は、私の誕生日だから特別に海斗のおごり」

好きなケーキ何でも買ってきていいってさ

いつもおごってもらっているような気がするが、この際それは忘れてしるふはうれしそうだ

「そう。さっきベリータルトができたのよ」

つられて微笑むとしるふの瞳にさらにうれしそうな光が宿る

「ホントですか!?じゃあ、ベリータルトと…、6つくらい買えばホール出来ますかね」

「ええ」

「よし。じゃ、あとは…ガトーショコラとミルフィーユとチーズケーキで」

頼み終わってそっと店内を見渡すと壁際の席に座る一組のカップルが目に入った

何か会話をしているようで二人で笑いあっている

そうやって向かい合って午後を過ごしている姿に懐かしさがにじむ

ここに来たころは、まだ海斗のことを本当に理解していなかったし、海斗の彼女としても自信がなかった

今では懐かしい思い出になってしまったあの頃も、忘れてはいけない想いで溢れている

たとえ、今の方があの頃よりも愛しさにあふれているとしても

「はい、どうぞ」