ある昼下がりの午後

ゆったりとした時間が流れる店内

くるくると音もなく回るプロペラが茶色い天井に浮かび上がる

暑くも寒くもない店内は、とても居心地がいい

カランー

ドアに取り付けたベルが小さく鳴って秋穂は顔を上げる

「いらっしゃい、…あら」

木製のぬくもりあるドアを開けて現れたなじみの客に微笑んだ後、その後ろに続いた陰に驚いたような瞳を向ける

「こんにちは」

響いた低い声はいつもと変わらず落ち着いている

「いらっしゃい、海斗君」

背の高い海斗を見上げてから、隣で店内を見回しているブラウンの髪の女性に目をやる

背がすらりと高く、まとう雰囲気は柔らかさと少しの幼さを持っている

視線に気が付いてふと秋穂の方を向く瞳は、澄んでいてとても綺麗だ

こんにちは、というとおずおずとこんにちはと返してくれる

その瞳を、ああ、これは仕方ないな、と納得しながら見つめ、

「海斗君も隅に置けないわね」

意味深な笑みで海斗を見上げる

「そんなことないですよ」

動揺した様子もなくさらりとかわすところは彼らしい