「会ってみたいね。お前をそこまで振り回す、でも、お前が離さない人に」

しみじみとつぶやいた弘毅に

「ろくな奴じゃないぞ」

と、即返答する

いろんな意味を込めて

「だったら別れりゃいいじゃん」

込めた意味を分かっているくせにNOと言わざるを得ないことを言ってくるのは弘毅らしい

しかも海斗の答えもわかっているくせに

「そういうお前もさっさと亜紀と決着付ければ」

やられたらやり返す、それが海斗の信条だ

しるふとのことでいじられっぱなしは頂けない

「お前くらいだよ、俺と亜紀のこと面と向かっていってくる奴」

高校時代から付き合っている二人に、結婚は?というのは結構勇気のいることだ

会社の人たちは触れてはいけない部分、と思っているらしく話題にしてこない

「だから言ってやってるんだよ。まあ、物好きなのは亜紀の方なんだろうけど」

弘毅が亜紀を追いかけたのではない、亜紀が弘毅を追いかけまわしたのだ

それを知ってるがゆえに今でもしっかりと付き合っている亜紀は大層な物好きと言えよう

「親友の好だ。亜紀には黙っといてやるよ。彼女さんのこと」

「そりゃどうも」

終止符を打つように放った弘毅の言葉に、小さく笑いながら頷いた海斗のグラスの氷が小さく音をたてていた










「とあるつぶやき」   完