あの時とこれからの日常

「ちゃんと聞いてたか、弘毅」

「聞いてた、聞いてた」

そう答える弘毅はまだ笑っている

失礼なやつだ、そう思いながら弘毅の笑いが納まるのを待つ

「いや、だって、海斗がそこまでちゃんと評価した女が過去いたか?」

「…いない、な」

「だろう?だからべたぼれなんだって」

わかってるさ、という返答は心の中だけだ

それを口に出そうものならさらにからかわれること必須だ

それは頂けない

しるふのからかいくらいなら3倍返しにできるが、弘毅相手になるとそうもいかない

相内くらいだろうか

口は達者な相方である

「会ってみたいね。海斗にそこまで言わせる人に」

「ろくでもない奴だぞ。口を開けば浮気だなんぞほざくし、人の脛にがっちりかみついてることを認めようともしない」

しかも無自覚極まりない

「いいことじゃないか。そこまで思ったことをはっきりと言ってくれるのは。無自覚なのも、かわいいと子だと思えば、な」

椅子に浅く腰掛け、腕を組んで告げてくる弘毅の言葉に、あそこまで行けば無自覚も確信犯レベルなんだよ、と心の中で告げる