あの時とこれからの日常

亜紀としては、遥ともっと続くと思っていただけにあっさりと二人が別れたことは、軽い衝撃だったらしい

単に亜紀が遥を気に入っていただけじゃないかと海斗は思うのだが

「……一応、本命はいる」

しばしの沈黙の後、ぼそっと告げた海斗に、弘毅がゆっくりと視線を向ける

「へえ、初耳だな。お前が本命言う女なんて」

遥さん相手にもんなこと言わなかったのにな

面白そうな笑みを宿す弘毅に、なんとも言えない視線しかむけられないのは、海斗自身自覚があるからだ

「…で、どんな人なわけ。お前にそこまで言わせる人は」

ひとしきり笑った後、弘毅がさらっと聞いてくる

こういうところ、こいつもだてに生きてはいない

「……、意地っ張りで強情で我がままで、寂しがり屋でしかも泣き虫のどうしようもない奴」

くるくるとグラスを回しながら抑揚なく告げる海斗を弘毅の少々驚いた瞳がとらえる

「……ふっ」

突然吹き出した弘毅に怪訝な瞳を向けると、笑いながら

「お前、それ、かなりべたぼれだろ」

と訳の分からない解釈が返ってくる