あの時とこれからの日常

ふふーん、と小さく鼻歌を歌いながら沸騰を待っていると

「…お?」

視界が少し暗くなったと同時に背後から抱きしめられる

「何?」

平静を装って尋ねると不機嫌そうな声が返ってきた

「何、ねー。どこの口がそんなこと言うんだか」

抱き締めながら肩に顎を乗せてくる

ああ、今日は海斗に背を向けないようにしようと思っていたのに

「どの口って、何もしてないじゃん。応援してただけだよ」

しかも夕食作ってあげたじゃない

「他の男に俺の目の前で口説かれておきながら、よくそんなことが言える」

いい度胸じゃないか

「いいじゃない、少しくらい張り合いがあった方が」

途中から海斗の吐息が耳にあたるもんだから、思わず身をよじっても

さらに腕に力を籠められるだけ

「こういうとこでさ、Sっ気を発揮しなくていいと思うよ。海斗君」

それに、本気じゃないよ

「あれが本気に見えないなら、やっぱりしるふは無自覚だな」

ついでに男を語る資格はない