あの時とこれからの日常

10秒、か

10秒で逆転、かつ試合終了となれば、ぎりぎりで点数を決めるしかない

しかも逆転

延長戦を持ちこたえられるほど他2名の体力が残っていない

耐久戦で不利なのは確実にこちらだ

ならば、終わらせてやろうじゃないか

ふっと口角を上げた海斗が床を蹴る

10秒間、小児科は海斗や伊東にボールを渡さなければ勝てる状況

確実なパスしかしてこない

言い換えれば、読み易い、奪いやすいパスということ

キュ、キュ、

バッシュと床のこすれ合う音が選手たちの耳に届く

「……ッ!?」

ついでに言おう

海斗のポジションはフォワード

パスカットもお手の物

残り3秒

タン、タッタンー

一定のリズムを刻んだのちに放たれたボールは、高めのラインを描き、すっとゴールに吸い込まれる

瞬間、ビーとタイマーが試合終了を告げる

満足げにニヤリと笑う海斗が立つ場所は、

スリーポイントラインの、外だった

13-12