あの時とこれからの日常

じっとりと海斗をにらんでいると

「海斗ー。そういうわけだからさー、海斗が負けたら私、嶌田君とデートだからー」

よろしくねー

しるふが笑顔で小さく手を振っている

何がよろしくだってんだよ

ふと細められた瞳が、無言で告げている

「嶌田ー」

はあ、とため息をついた海斗が、持っていたボールを二回ほど床につく

「なんすか」

ポーン、と大きめに放たれたボールは、音もなく、

少しだけネットを揺らしてゴールに吸い込まれていく

「…人の女に手を出したこと、後悔するぞ」

ボールの行方を見届けてから、ニヤリと笑った海斗の声が、嫌に反響して聞こえた

試合は、井東のジャンプボールからスタート

さすが海斗が見込んだだけあって、きちんと宙に舞ったボールを味方の方へ押してくる

きゅ、きゅ、と床とバッシュの擦れる音が会場に響く

井東から佐上に渡ったボールは、小児科のガード陣営ができる間際、対角にいる海斗に渡される

一度も足を止めることなくボールを受け取った海斗は、

そのままゴール下をくぐって後ろ手に軽くボールを放つ

2-0

まずはERの得点だ