「まあ、仕方ないよ。さすがの私も今日の海斗はちょっとかっこよく見えるもん」

と隣で同じように手すりに寄りかかったしるふは、苦笑する

「だってー、黒崎先生は立花先生のものですよ?なのに、何かある度にキャー、キャーと。うるさいのなんのって」

不機嫌そうに瞳を細める園田に優しく笑いかけたしるふの耳に、

ピーと試合終了のホイッスルが聞こえる

試合時間は10分

通常の試合と考えるととても短いが、普段運動と無縁の医局員たちにはこれが限界

案の定、ホイッスルと同時に何人かが床に転がる



「海斗」

次の試合の準備が始まる中、

コートサイドの邪魔にならないところに腰を下ろして軽くストレッチをしていた海斗の視界に、

見慣れたベージュのズボンが映る

「よう」

視線を上げるとはにかんだように笑いかけてくる黒崎病院のマドンナ

お疲れ、と言葉とともに海斗の前にしゃがみ込む

「さすが星稜高校バスケ部両翼伝説を築いただけのことはあるね」

ちょっと惚れ直したかも

照れたように笑うしるふに、ふっと勝気に笑いつつ、手を後ろについて体重をかける

「当たり前だろう。これでも小学校からやってたんだから」