「……意外と、優しい…の、かなあ?」

医局にぽつんと残されたしるふは、言葉の節々に疑問を含みつつも消えた海斗の背を見つめていた



これが二人の始まりの始まり

海斗の瞳が、優しさをはらむのは、彼女の寂しさを知るのは

しるふが、嬉しそうに彼を見上げるのは、あの凛とした雰囲気に隠された思いを知るのは

もう少し後のこと

それまでに積み上げた日々は、今だって鮮やかに思い出すことができる

いつまでも色褪せない、それは、一つの輝きだから



次の日ー

「立花」

「はい!」

海斗から呼ばれて勢いよく返事と共に振り返る

「外科的軌道確保の仕方、教えてやるから来い」

相変わらず愛想はないけど、でも少しだけあの瞳が優しくなったのは気のせいだろうか

「はい!!」

きっと気のせいじゃない

そう思いながら背を向ける海斗をぱたぱたと追うしるふの快活な足音が響いた