それはとある5月のとある食事会にて


「あれ?父さん、海斗は?」

「ん?さっきまでそこに…。…いないな」

どこ行った?あいつ

怪訝そうに顔を見合わせる沙希と信次

つい先ほどまで嫌そうな顔をしながら煌びやかな女性たちに囲まれていた海斗がいて

相変わらずだと苦笑していたのだが、

気が付いたらその海斗が消えていた

けれど周りの女性たちはそのことを気にかけている様子もない

「そういうところ、あいつもうまいよな」

我が息子ながら、その失礼にならない、

けれど決して誰とも距離を詰めることなく絶妙なさじ加減で彼女たちと接し、

気が付かれないほど自然に姿を消す特技は、なかなかのものだと思う

いったいどこで身に着けたのか

「…今日は、いつもに増してさっさといなくなったな」

まあいつものことだから、と大して気にした様子もなく、信次がつぶやいた