「そうだ、黒崎先生」

ICUに向かおうと立ち上がった海斗を園田が見上げてくる

「黒崎先生はペアリング、勤務中はどうしてるんですか」

立花先生は、首にかけてるって知ってますけど

沈黙が流れ、海斗がふ、と小さく息をつく

「園田」

「はい」

しごく真面目な声につい反射的に返事をしてしまう

「そういうのを野暮な質問って言うんだぞ」

するりと園田の横を通り抜ける海斗を視線で追う

「あ、おはようございます、黒崎先生」

ICUですか

「ああ」

丁度医局に入ってきたしるふが、海斗を認めて笑顔を向ける

「じゃあ私もICU行こうかな」

二人分の足音が遠ざかっていく中

医局に残された園田は、納得したように一人頷いていた