「黒崎先生ー」

今は不在の立花しるふの椅子を拝借し、パソコンに向かう海斗に近づく

彼、黒崎海斗は、園田夏美にとって雲の上の存在

余りに凄すぎて逆に近づきたくない人

でも、彼自身がそこそこにいい人だとは知っている

「なんだ、園田」

キーボードの上に手を置いたまま、視線だけを園田に向けてくる

「今度飲み会しませんか」

でも、その言葉を言うのに実はすごく心の準備をした

ついでにタイミングもすごく伺った

だって、軽く誘えないじゃないか

「飲み会?ERでか」

それなら俺じゃなくて医局長とか飯田とかに言えば喜んで企画すると思うけど

酒にあまり強くない海斗は、基本姫君のタクシー役として参加する

参加しなくても飯田辺りからお迎え要請がかかるのだから、どうにかしてほしい

「違います。同期が黒崎先生を飲み会に誘ってほしいって」

この間の女子会でうん、というまで離してもらえず、

言ってしまった手前、ちゃんと任務を遂行せねばとこうして海斗に向かい合っているのだ