あの時とこれからの日常

よし、なるようになれ、だ

とドアを開ける

「ただいまー」

平静を、平静を、と心の中で念じつつ放った間延びした声が響く

背後で疑いたくなるほどいつも通りに「お邪魔します」という声が聞こえる

と、

「おかえりなさい、しるふちゃん。と、初めまして」

リビングのドアが開き、希央がぱたぱたと出迎えてくれる

「紹介するね、兄のお嫁さんの希央さん。希央さん、こっちがいろいろお世話になってる黒崎海斗さん」

うっわ、海斗にさん付けとか後で怒られないかな、と一瞬思ったのは、それだけ自分が冷静な証拠

「初めまして」

小さく頭を下げる海斗と、それに応じる希央

それを見届けてから

「はい、これお土産。というか私が食べたかっただけだけど」

笑顔を絶やさない希央に小さな箱を渡し、靴を脱いでスリッパをはいていると

「黒崎?」

ぱたぱたと階段を下りる音とともに驚いたような声が降ってくる

海斗と二人、同時に顔を上げると

「滝沢さん?」

海斗が隣で驚いたような声を出す

「…二人、知り合い?」

もっと驚いているのはしるふと希央だ

海斗と由斗の間をくるくると見回す