深淵に棲む魚



 もう一度、あの涼やかな声を聞きたかった。

 清らかに澄んだ三味線の音を聞きたかった。

 切れ長の瞳で射抜かれるように見つめられたかった。

 烏帽子の男の姿が、声が、三味線の音が、どうしても頭から離れなかった。



 何をしていても。どうしても。



 いつも胸が苦しかった。

 どうしようもなく、身体が疼いた。

 男を忘れようとすればするほど、会いたい気持ちはいっそう募るばかりだった。



 一目だけでいい。



 もう一目だけ、遠いところから男の姿を眺めよう。

 それだけで構わない。




 結局私は湖を浮上し、川上の方へと泳いだ。