深淵に棲む魚



 矢も楯もたまらず、舟に近寄った。

 しかし、どこか様子が違った。



 舟は小さく、霧に呑まれそうなほど頼りなかった。

 内側で灯る提灯が、障子を開けて格子に座る男の顔をぼんやりと照らしていた。



 妙に色気のある、人なのに人でないような、浮世離れした男だった。

 男は烏帽子を被り、三味線を鳴らしていた。

 美しくて儚い音色だった。

 それを奏でる男も儚く見えた。



 なんとなく、全てが懐かしいような、妙な気分に襲われた。