沢山の魚が泳いだり隠れたりしていた。

 大が小を喰らう世界だった。


 餌を食べた魚が、次の瞬間には餌になっている。

 そんな世界で、唯一、私だけ喰われない生き物だった。

 私より大きな生物も私より獰猛な生物も存在しなかったからだ。


 空腹を感じれば魚を喰らい、泳いだり眠ったりを繰り返した。

 何ら疑問も持たなかった。

 そういうものだと思っていた。

 退屈という言葉を知ったのはずっと後のことだ。