曲が終わると、女は小首を傾げて尋ねる。



『地下の特設会場は見た?』

 ジャランと弦を鳴らし『まだ』と短く答える男。


『行こうよ』にっこり笑う女。

 長い、節ばった男の指が女の手に重なる。

 二人はどちらともなく指を絡め立ち上がった。

 お互いを理解しつくしている自然な動作だった。