① 憑き物落とし~『怨炎繋系』~

 ――来た。

 今までとは違うモノ。異質なモノ。

 そんなものを初めて目にした時、人は恐怖し、動揺する。そこから『ほころび』が生まれる。お前も元は人間だったんだ。怯える者にとってのそれが異質なら、逆に霊にとっての僕もまた異質。わかるだろう。記憶に関わるモノなら、僕のしてきたこと、しようとすることもわかるはずだ。

「……始めようか。これから僕は『君』の存在理由、その真相をつきとめる」

 聞いているのだろう?

 ――ベッドの下にへばりつく違和感と冷気。はっきりその存在こそ見えずとも、声を送る方向を見定める。

「僕は、これから徹底的に君を調べ上げ、全てを知る。明後日だ。ここから君は動けない。その時、君はもうこっち側にはいられない」

 思念体たる霊は、強い想いと存在目的に縛られた法則によって動いている。それは一見、歪なようでいて、本質は整然と駆動するプログラムに通ずるものがある。微かな反応でも構わない。異質さという礫があれば、感情の不具合を誘うことができる。そのほころびを、少しずつ開いていく。

「灰川さん、あんた何を」

「静かに」

 触れることも。聞くことも。今の僕には不可能だ。しかし、こうして『伝える』だけで、切り崩すためのきっかけは作れる。
 濃度が変化するように、点滅するかのように。空気の質が淀みの中で不安定になっていくのを感じる。奴は僕の行動に対して何らかの動きを起こす。その全てが、これからの武器になる。

「う……ん……」

 目を固定していた僕の耳に、瑞町夕浬の呻き声が届いた。意識を取り戻したようだが――それよりも今は。
 僕は集中を切らさないように観察を続ける。警戒心か殺意か。奴はその濃さを増しながら、危うげに息を荒げている。空間そのものから粘りのある息伝いがついに聞こえ始める。

 もう少しだ。悪意は僕に照準を合わせている。

 ――しかし、その時だった。