① 憑き物落とし~『怨炎繋系』~



 私は、 不真面目な父と母の間に生まれたとされているが、私は実際のところ、誰の子なのか断定できないらしい。
 
 ……そんな折、母が私を身ごもった時、絶望の表情をしたのだと、問い詰めた父からはそう聞いた。父は、今もまだ最低の人間で、開き直って笑い飛ばしながら私に真実を伝えた。

 それからというものの「目が気に入らない」という理由で私は幾度も父から暴力を受けた。

 振り下ろす拳が、浴びせられる罵声が、恐ろしくもありどこか必要なもののようにも感じていた。罰を受けることで少しでも報いになれば、自分という存在が許される気がしていた。

 私は、高校を卒業すると同時に家を出た。

 自分の居場所なんて最初からなかった。実家には悲しみが。家庭には憎しみが。だから、ここから先は私独りでも生きていく。強くならくちゃいけない。例え、私が望まれずして生まれ、母を殺したのだとしても、生き抜かなくてはならない。

  『今の母』は、恐らく私への同情から金銭の援助をしてくれているのだろう。愛を知らない私も、大学に入って怜二と出会えた。私を気遣い、思いやってくれる怜二に素直に頼れる私は、落ち着いてきた証拠だろう。だがその分、私は弱くなったのかもしれない。でも、怜二の隣にいれて、柚子と笑うことができて。そんな今の暮らしが、何よりも大切だ。何も失わずにいたい。失うのならば、せめて。せめて罪深い私の命だけにして欲しい。



 ――記憶。


 私の、記憶。


 今までどこかにしまわれていた、私の過去。


 失ったはずの意識は、そこまで過去を振り返ったところで、少しずつ戻り始めた。

 
 瞑っていた目を開ける。細い視界は、瞬く間に一気に広がった。



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