翌日、私は柄にも無く弁当を作った。元々料理は好きで、よく親の手伝いをしている。だから、大抵の料理は作れるくらいの腕はあった。ただ、今日作ったのは自分用ではなかった。

「重い…かな?でもいつも購買で買ってるって言ってたし、大丈夫大丈夫。」

重い思いは嫌われると何処かの誰かが言っていたが、弁当を作ることは重いことなのだろうか。

嫌われたらどうしようと頭の隅で考えてはいたが、気づくと弁当は出来上がっていた。

「渡せなかったら、どうしようかな。」

期待と不安を胸に私は今日も登校した。


彼が朝練のため登校デートをすることが出来ないので、私はいつも女友達と一緒に登校してい
るのだが、今日は弁当のこともあっていつもより早い時間に学校に着いてしまった。    

いち早く彼に会いたいという気持ちが私の中に芽生えてきているのだろう。

「これが好きっていう気持ちなのかな…?」

誰もいない教室でそう呟いてみる。誰かに聞かれたら恥かしくて死にたくなると思うけど。

教室の窓ガラスからは陸上部が練習しているのが分かる。彼がいるかどうか気になったので見てみると、そこには全力疾走で風を切っている彼の姿があった。

その姿を見ているだけで、何かが満たされている気がしてとても心地よかった。


「なんであんたなんかが。」


教室の静寂をぶち壊すかのように放たれたその言葉は、私を現実に引き戻した。

「えっ…。」

咄嗟に私に向けられた無機質な言葉に振り返ると、そこには誰もいなかった。

静寂だけが再び教室を包み、少し不安になる。

「一体なんだったんだろう…?」