私は、体中の体力を使って猛ダッシュ。
……なのに。
やっぱり、高橋くんの足には勝てる訳なくて。
簡単に追いつかれて、後ろから抱きしめられてしまった。
「…っ…やだっ!!」
「瑛未ちゃん!!」
腕の中で暴れる私を、さらに強い力で抱きしめる。
「触らないでよっ!!」
「―…瑛未!!」
名前を呼ばれたことにビクッと体が反応した。
「…暴れないで聞いてね?もうオレとは、一緒にいたくないの?」
―…そんな弱い声で聞かないで。
そんなの高橋くんらしくないよ?
「…そんなんじゃないよ。でも…一緒には、いられない。」
「瑛未が言ってたオレの彼女のことなんだけど―…」
―…『彼女』
高橋くんは、チカさんに浮気されてるよ?
なのに、まだ彼女って呼ぶの?
…チカさんは、ずるい。
どっちか選ばなきゃ、両方を選ぶことなんて出来ないのに。
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