カサっ
勢いよく草むらから抜け出した
あたしの目の前には
満月に照らされた大好きな場所が広がっていた





「おい!優香!!」
すぐ後からさとるも追いつく




あたしはかまわず
丘の真ん中あたりまで足をすすめた




「優香!」
さとるはあたしの腕を強くつかんだ


「離して!」
一度は止まったはずの涙が頬をつたう




「嫌だよ!このままじゃ嫌だ!!」
ありったけの力を振り絞って
さとるに向かって吐き出した


「会いたい・・・」
力なくしゃがみこんだあたしをさとるが受け止めた
「優香・・・」




「さとるお願い!!もう1度まもるさんに会わせて!!」
その時のさとるの顔を
ずっと忘れないだろう・・・



この時あたしは
本当に自分のことしか考えてなかったね



さとるはとても悲しい顔をして
あたしの涙を優しく拭ってくれた


ふいにさとるがまもるさんに見えた
優しさが重なって・・・




「嫌だ!!さとるじゃ嫌だ!!
まもるさんに会いたい!!お願い・・・さとるぅ」



泣きじゃくるあたしの腕をつかんだまま
さとるは悔しそうに俯いていた




あたしのつけた傷は
どれだけ深かっただろう



その時のあたしには
そんなさとるを気遣う余裕もなかったね



ごめんね・・・さとる