…今、バカって言った?
私のこと、バカって言った?
いやいや、確かに私は成績良くないし、テストで瀧澤になんて絶対勝てないよ?
でもさ、やっぱりこう正面切って言われると…
…
めちゃくちゃ腹立つ。
「…あのさぁ、さっきから何なの?」
私は応戦を決意した。
「自分が『今日は解散』って言ったのに、みんなが居なくなったら急に態度変えてさ。
いきなり私のこと『お前』呼びするし。
彼氏以外の男に『お前』って呼ばれたくないの!
ていうか、バカって何よ、バカって!!」
「バカだからバカって言ってやってんだろ。
『急に』態度が変わったって?お前、何も見えてねーんだな」
「はぁ?」
「俺、何度もお前に警告出してたけど?
あのふざけた演説の時も、さっきの話し合いの時も、目で合図出してたよな?
『真面目にやれ』って」
「そ、そんなの……」
そんなの知らない、と言おうとして口をつぐんだ。
確かに、何度も瀧澤の厳しい視線を受けていた。
そしてその度に、実は瀧澤に少し恐怖していた。
本気で怒らせたかも、これはマズイかも、と。
それでも尚、難を逃れようと、瀧澤の意思を受け止めないようにしようとしていたのは、それで何とかなると思っていたから。
自分で「やりたい」と言い出した生徒会ではないし、できるだけラクをしたかったから。
それに、教室で見る温和で物腰柔らかい瀧澤なら、きっと許してくれると思ったから。
それが、間違いだったなんて。
しかも、そのことに、今ようやく気付くだなんて。

