「あ、えっと…」
瀧澤に促されて、自己紹介をする。
が、突然思い出した。
私、そういえばとんでもない演説をしていたんだった。
立候補したくせに、「生徒会をやる気はない」なんて。
瀧澤だけでなく、金子さんも十文字くん(やっぱり最初から名前では呼べない)も、
私のあのひどい演説を聞いていたんだ。
そう思うと、普通に「よろしく」なんて言えない。
ま、まずは謝らないと!
「ふ、副会長に当選してしまいました、二年後五組の村越沙奈江です。
あの、立候補演説では、変なことを言ってしまい、すみませんでした」
生徒会室がしんと静まる。
いや、もともと4人しか居なくて静かではあったのだけど、静寂が深まったような。
端的に言ってしまえば、空気がずっしりと重くなったような。
……それで?
誰が発言したわけでもないけれど、私は勝手に、そう促されたように感じた。
何か、何か言って、とりあえずこの空気をなんとかしないと!
「えと、あの、あああの時は『やる気ない』なんて言ったけど、今はもう頑張る気マンマンです!
よ、よろしくお願いしまーす!」
…ってオイ!
何言ってるんだ私!
空気をなんとかしたいがために「頑張る気マンマン」だなんて、わけわからんこと言いやがって!!
このままでは、本当に「やる気のある人」としてとことん巻き込まれて振り回される…!
そ、そーだ!
勉強が忙しいことにして、あんまり会議に参加できないことにすれば……
「よろしく」
「よろしくね」
…………。
村越沙奈江の自己紹介タイムは、会計と書記の一言によって強制終了されました。

