金子さんの自己紹介が終わると、次は名前も知らない例の男子の番だ。
「僕は書記の十文字英。『英語』の『英』で『あきら』って読みます。二年二組です。
『じゅうもんじ』だと長いから、『あきら』って呼んでね」
十文字くん、もといあきらくんはそう言ってにっこりと私に微笑みかける。
この部屋の案内の仕方とか、ちゃっかり名前で呼ばせようとするあたりとか、この笑顔とか、
なんというか…人なつこい?
ううん、チャラそう?
そんな印象かも。
それにしても、会計が「金子」で書記が「十文字」なんて、ちょっと面白いかも。
役職のイメージと、苗字のイメージが少しリンクするような。
あ、でも「瀧澤」は全然会長っぽくないな。
「じゃ、当選したての副会長も自己紹介を」
瀧澤はやっぱり、私の心が読めるのだろうか。
彼の苗字にいちゃもんをつけるつもりはないけど、ちょっとふざけたことを考えると、その瞬間に私の意識をつまらない現実へと引き戻される。

