そして、放課後。
「じゃね、沙奈江!いってらっしゃーい!」
亜紀はそう言って、手に持ったラケットをぶんぶんと振る。
「はーい…亜紀も部活ファイトー…」
「おうっ!」
私の気のない応援に、亜紀はガッツポーズをしてみせた。
ああ、あの亜紀の元気な気持ちと、私のゲンナリした気持ちを取り換えてほしい…。
亜紀と別れて、私は一人とぼとぼと廊下を歩く。
生徒会室は、校舎の2階、職員室前の廊下の脇にある。
少し奥まったところにあるから、あまり目立ちはせず、みんな普通に素通りする。
下手すれば、卒業するまで生徒会室の場所を知らない人もいるくらいだ。
私はその薄暗い入口にひとりで立つ。
このドアを開けると、もう正式に生徒会に参加することになっちゃう。
うう、帰りたい。
帰りたい帰りたい帰りたい!
「…うん!無理!!帰ろう!!」
「何が無理なの?」
「ひゃああっ!?」
独り言に反応があったことに驚いて振り向くと、そこには知らない男子生徒が立っていた。

