「村越さん、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!!」
遠巻きに見ていた村人A・高田くんが話に入ってくる。
「これ、読んで。生徒会規則」
「何よ、これ読んで心を落ち着けろっていうの!?
今の私は写経をしたって絶対に落ち着かないわよ!!」
「そうじゃないよ。とにかく、この選挙についての章だけでいいから」
高田くんはそう言って、生徒会規則の冊子をぐいぐいと押し付けてくる。
「んもう!ほんと、何なの!!」
私は冊子を乱暴に取り上げて、ガサガサとページをめくる。
『
池松高等学校生徒会規則
第1条
この規則は、池松高等学校の学生に適用すべき必要な事項を明らかにすることを目的とする。
… … … … 』
私は、言われた通りに生徒会選挙についての章を読む。
ただ、そこにはごくごく普通の決まり事が書かれているだけだった。
選挙には生徒の誰でも立候補できるとか、候補者が居なければ再選挙をするとか。
「……で、これが何なの?」
「見つかった?」
「は?何が?」
「僕ら選挙管理委員が、『候補者が辞退した場合には、他の候補者にその旨を報告する義務がある』とかいう条文が」
「えっ、そんなの無いけど…」
無いけど…。
え、うん、確かに無いけど……。
「ちょっ、何、まさか、『言う義務がないから黙ってた』とか言うつもり…?」
できるだけ声を抑えながら言うと、村人A・高田くんと、ドアの番人・坂田くんはコクコクと頷いた。

