まじかよ。
なんでだよ。
どうしよう。
てか、まじかよ。
私の頭の中では、さっきからこの3つの言葉がずっとループしている。
なんで私しか立候補者がいないの。
どうしてこんなことになったの。
異変に気付いたのは、10分前、この体育館のステージ脇に来た時だった。
そこにあるはずの物がなく、居るはずの人が居なかったのだ。
私はその時の会話を思い出す。
「……ねえ、村人A…じゃない、高田くん」
「ん?なに?」
近くにいた選挙管理委員に話しかけると、彼はこちらを振り返った。
「あのさ、なんでステージ上に、候補者が後ろで控える用の椅子がないの?」
「だってそんなの必要ないじゃん」
「へっ?会計と書記の選挙のときはあったじゃん」
「ああ、あの時は候補者が複数居たからね。
演説してる人の後ろで他の候補者を立たせてたらおかしいでしょ?
だから椅子を用意してたんだ」
「うん、だから、今回も要るよね?」
「いや、要らないでしょ」
どうも彼との会話がかみ合わない。
他の委員に聞こうと周りを見渡すと、少し向こうに村人Bこと岡田さんの姿があった。
「岡田さん、あの、椅子は…」
「岡田ー、ちょっと来てくれー」
「はーい」
話しかけると同時に、岡田さんは先生に呼ばれてどこかへ行ってしまった。
すぐそばには、村人C役の塚田さんが立っていた。
私と目が合うと、塚田さんはビクンと肩を震わせた。

