父は風景を専門にとるプロカメラマンで、そこそこ名の知れた人だったらしい。 今でも時折読む雑誌に父の名前を見つけることは珍しくない。 そんな父が撮った写真の中、若い母さんは本当に幸せそうに微笑んでいて綺麗だった。 梅雨の鬱陶しさなんて微塵も感じさせず、それは本当に芸術作品のようで…。 むしろ雨の一滴まで光って、まるで宝石の様だった。 「自分もこんな写真が撮りたい…」 漠然と湧き上がった情熱。 目の前に、確かな道が開けた瞬間だった。