退屈な校長先生の話はまったく耳に入らずに、入学式は滞りなく終わった。 一旦教室に帰ると、簡単な挨拶が済まされ解散になった。 石のように重い頭を手で支えながら、大きな溜息を一つ吐いた頃、真知子に声を掛けられた。 「ゆめ、隣のクラスの子が迎えに来てくれてるよ。」 その言葉に視線をドアに移すと、夏希が手を振っていた。 真知子にお礼を告げて、ドアにふらふら歩いて行く。 最後に教室を見渡した時“彼女”の姿はどこにもなかった。