「あ、もう、姫で結構です」
話が長引きそうなので渋々納得すると、樋口さんは満足げにうなずいた。
「話を戻しましょう。この方はどなたで、姫とはどのようなご関係で?」
樋口さんの目が鋭く和希くんを捕らえる。
あわわ……和希くん、ごめんなさい。
悪い人じゃないんだけど……。
「名前は桜井和希といいます。陽菜さんとは……」
和希くんの視線は一瞬だけ私に向けられて、それはどう説明すべきか悩んでいるみたいに少しだけ宙を漂った。
1つ分の呼吸を挟んでから、和希くんは口を開いた。
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