「大ちゃん!!」
後ろから急に現れた大ちゃんは、すっと私を追い越してトランペットの練習部屋の方へ歩いていく。
彼は少し先に木下美波の姿を見つけて、急いで「おはよう!!」なんて言ってる。
すごく身勝手だけど、"頑張れ大ちゃん"と心の中で応援してみた。
教室に着いて練習を始めようとしてから、楽譜を音楽室に置いていたことを思い出して慌てて取りに行く。
楽譜が入ったクリアファイルをロッカーの中で見つけて、勢いよくそれを引っ張り出すと何かがひらりと舞った。
"下手くそ"
かわいいクローバーの便箋には似つかわしくない言葉。
拾い上げた紙に書かれたその言葉を見て、私は固まった。

