夕食の後、和希くんは自分の部屋に戻ってしまって、リビングには樋口さんと私が残された。

ポツン、ポツンとキッチンの方から水音が響いて、なぜか居心地を悪くする。


「姫」


「ふぁい!」


急に話しかけられたせいで変な声出しちゃった……。


「姫がずっと想いを寄せられていた方は桜井殿ですか?」


え……和希くんの話なんてしたことあったかな。


私が戸惑っていると、彼はため息をつきながら優しく微笑んだ。

その仕草はずっと前から知っているもので、それを見ると急に緊張が緩む。


「気付いてないとでもお思いですか?」


「う……」