キッチンについていた右手に、希龍くんの左手が絡む。もう片方の手は、あたしの髪をサラサラと撫でた。 「ねぇ、美波。」 近い、近い。 ジリジリ迫ってくる希龍くん。 「な、何…?」 額同士がコツンとぶつかった。 甘い香りが鼻を擽る。 「…希龍くん…?」 甘ったるい空気。 …心臓、破裂しそう… 「よそ見とか許さないよ。」 「え…?」 低くて掠れた声が耳元で聞こえた。 頭がクラクラする。 「美波は俺だけ見てればいいんだよ。俺も美波のことだけ見ててあげるから。」