最近、学校や巷間(こうかん)で『小形寄生物(こがたきせいぶつ)』を手に持つ人をよく見掛ける。
 指でその『小形寄生物』に取り付けられてあるボタンを押したり、その『小形寄生物』を自分の耳に当てたりしている。
 俺は正直、その『小形寄生物』とは関係を築きたくなかった。だが、親が「連絡を取るため」と俺に『小形寄生物』を所持させた。
 俺の『小形寄生物』は、体躯を薄白く彩色しつるつるしている。折り畳み式でカメラや電卓、インターネットまで一通り熟(こな)せる物品だ。
 『小形寄生物』さえあれば何でも出来る気になってしまう。そんな錯覚に陥ってしまいそうだ。いや、錯覚でも何でもない事実なのかもしれないが。
 『小形寄生物』つまり『携帯電話』は俺の嫌いな代物である。



『小形寄生物』